自律型チームのつくり方 ~変化の時代に適応するマネジメントとは~ #02
自律型チームのつくり方 ~変化の時代に適応するマネジメントとは~
#02自律型チームに求められるマネジメントスタイル
激変する環境、テレワーク推進によるコミュニケーションの希薄化、価値観の多様化など、チームマネジメントの難しさが高まり続けています。変化に適応し、メンバーが自ら考えて動くチームになるには何が必要なのか?
「自律型チーム」をつくるためのカギとなる考え方、日々の仕事の中で実践できる手法を全6回シリーズでお伝えします。
2.自律型チームに求められるマネジメントスタイル(本記事) 3.なぜ、主体的なアクションは生まれないのか? 4.自律型チームに欠かせないものとは何か 5.文脈の共有のカギとなるもの 6.日常業務のミーティング改革を可能にするSOUNDメソッド |
自律型チームに求められるマネジメントスタイル
前回のコラムでは、これからの時代においてチームマネジメントが難しくなっている背景についてお伝えしました。
今回は、これまでのマネジメントスタイルとこれから求められるマネジメントスタイル(=自律型チーム)の違いを見ていきたいと思います。
「これまでのマネジメント」と「これからのマネジメント」の違い
「これまでのマネジメントスタイルが通用しなくなった」
このような言葉をよく聞きますが、「これまでのマネジメント」とは、どのようなマネジメントスタイルなのでしょうか?
「これまで」と「これから」の違いは、何らかの“正解”が存在するかどうかで整理してみると分かりやすいでしょう。
正解とは、これまで培ってきた成功パターンかもしれませんし、海外や競合他社も含めたベストプラクティスかも知れません。あるいは「売上目標●●円」「とにかく業績アップ」「コストを下げよう」など分かりやすい方針や目標なども当てはまるかもしれません。
いずれにしても、正しい答えというものが存在する、あるいは自明であるような状況です。
この状況においては、「何をやるか上が決めて、下が早く正確に実行する」という、いわゆるトップダウン型の組織運営が最も効率的です。正解はあるので、その正解に向かっていかに生産性を高めていくのかが命題となります。これまでの多くの日本企業は、この組織マネジメントに適合し、それを極めてきたと言えるかもしれません。
それに対して、変化が激しく正解が無い状況では、試行錯誤しながら現場で答えを見つけ出していくことが求められます。上からの指示を待つのではなく、一人ひとりが自分の頭で考えて、自律的に動けることが重要になります。また、組織の枠組みを超え、顧客や関係者と新しい価値を共創していくような動きも求められます。
新しい時代のマネージャーの役割とは?
では、このような状況の違いによって、“できる”マネージャー=機能するマネージャーはどのように変化するのでしょうか?
これまでのマネージャーの主な役割は、「目標に向かってしっかり計画を立て、役割分担を決め、進捗管理していく」ことです。そして、メンバーに的確な指示を出し、計画をやり切らせることができるマネージャー、あるいは自ら率先垂範して手本を見せられるマネージャーが優秀なマネージャーと言われてきたことでしょう。また、「失敗しないように」という観点で業務の仕組みづくりや効率化を推し進めていくこともマネージャーの重要な役割でした。
一方、これからの自律型チームに求められるマネジメントとは、どのようなものでしょう。変化が激しく正解が無い状況では、期初に立てた目標や計画だけでは機能しにくくなります。変化する状況に合わせて目標や計画を見直していく必要がありますが、それ以上にメンバー一人ひとりが、その場その場で臨機応変に考えて動くことが求められます。その際に必要なのは、目的やビジョン、大切にする価値観など、判断するための「軸」となるものです。この「軸」となるものをチーム内で共有し、機能するようにしていくことが、自律型チームつくる上でのポイントとなります。
そして、仕事を「やらせる」のではなく、メンバーの主体性や創造性、情熱を引き出すような関わり方が大切になります。また、「失敗しないように」という観点からの仕組みづくりではなく、失敗できるチームづくり=正解が無いなかで試行錯誤できる心理的安全性の高いチームを作っていく必要があります。
これまでの「できるマネージャー」の姿勢が足かせに?
このような変化に適応するには、マネジメントの「やり方」だけではなく、マネジメント観そのものが変わっていく必要がありそうです。
変化を求められるマネジメント観の一例
これまで | これから |
「マネージャーである自分が正しい答えを示すべきだ」 | 「自分も正解は分からないので、メンバーや顧客と一緒に見つけていこう」 |
「一度決めた目標は、何がなんでもやり切らせる」 | 「状況が変わったので、目的に立ち戻って目標そのものを見直そう」 |
「メンバーの意見を一つにまとめ、一致団結して足並みを揃えていこう」 | 「一人ひとりの異なる視点や意見を引き出し、個性や強みを活かしていこう」 |
このように見ていくと、これまでのマネジメントスタイルで成果を出してきた“できるマネージャー”たちが、難しさを感じている理由が見えてきます。これまでの成功体験やマネジメント観が、かえって「足かせ」になっている場合もあるかも知れません。新しいマネジメントスタイルを学ぶだけではなく、無意識に前提となっていた自分自身の固定観念などに気づき、それを学習棄却(アンラーニング)していくことも必要になってきます。
ちなみに、このコラムでは極端な対比で示しましたが、現場の置かれている状況はさらに複雑です。チームメンバーには自律性の高いメンバーもいれば低いメンバーもいることでしょうし、業務・タスクにも「正解があるもの/正解がないもの」が混在していることでしょう。起きている“変化”も目に見えるものだけではなく、感じにくいもの、認識しにくいものもあるかもしれません。
このように、自律型チームになることが望ましいことは頭では分かっていても、一筋縄ではいかないと感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
次回のコラムでは、「では、どうすればいいのか?」を考える前に、「なぜ、メンバーの主体的なアクションは生まれないのか?」について探求していきたいと思います。
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執筆者
株式会社ミライバ ディレクター 岩崎 真也
明治大学政治経済学部卒業。大手アパレル小売業を経て、1997年テンプスタッフ株式会社に入社。社内ベンチャー制度による新規事業責任者等を歴任。2007年テンプスタッフラーニング株式会社 代表取締役社長に就任。様々な分野の専門家とのCo-Creationにより「組織開発」「メンタリング」「アルバイト・パート採用育成」などの分野で今までにない新しい人材開発プログラムを開発するとともに、講師としても多くの企業で研修を実施。
2017年、同社とパーソル総合研究所の統合に伴い、取締役執行役員ラーニング事業本部長に就任。2018年、新規事業の立ち上げ、子会社の経営・マネジメント、会社合併・統合の推進など、これまでの様々な経験を活かし、組織開発領域のコンサルタントとして独立。
2019年株式会社ミライバに参画。「学習する組織」「U理論」「成人発達理論」などの考え方をベースに、新しい時代に求められる組織の在り方を探求し、組織づくりを支援している。